色白ゆうじろうの無味無臭ブログ

怪奇・ホラー漫画を中心に、小説、エッセイなど読み物を投稿してます。

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母、自衛隊に拘束されかける。 後編

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前回の3行あらすじ

郵便ポスト
探し求めて
駐屯地

はい。続きです。

駐屯地にやってきました。
あたりは暗く、駐屯地入口だけがぼんやりと闇に浮かび上がっています。

オリーブドラブの服(だったと思います。迷彩かも知れませんが)を着た自衛官が、背筋を伸ばして直立不動で警備しています。

子供心に近寄り難い雰囲気はひしひしと感じました。

母は駐屯地にぶち当たる片側1車線道路の、左寄りに車を止めました。

それこそ、自衛隊の真ん前です。

駐屯地入口に車の頭を向け、止まる格好になりました。

ガクンッとマニュアル車は止まり、母は
「ここで待ってなさい」
とだけ言うと、車を降りました。

どうするのかな。と子供心に疑問でした。
パッと見て、ポストがあるかどうかはわかりません。

聞いてみるのかな?
筆者は助手席で母の姿を見守りました。

普通のですね。通常人としての感覚と常識があれば、番をしている自衛官に声をかけると思うんですよ。

ポスト見せてくれませんか?

と声をかければ、勘の鋭い自衛官なら

ああ、ポストを見に来たんだな。

と万が一にも思うかもしれないじゃないですか。

我が母は、わき目も振らず駐屯地の正面口へ駆け出したのです。

歩くとか、そんな感じではありません。
腕をピストンのように振りながら

走っていったんです。

自衛官の視線が瞬時に母へ向きました。

しかし、母は止まりません。

ポストを見る。その目的のために止まることはできなかったのかも知れません。

自衛官も面食らったと思います・・・

ガクガク走ってきた車が突然基地前で止まり、車から降りてきた女性が駐屯地内に駆けてきたのですから・・・

母は、警備している自衛官の前を素通りしました。

完全に基地の中です。

次の瞬間、母は3-4人の自衛官取り囲まれました。
母は自衛官にボディランゲージを交え何かを伝えようとしています。

無理です。
ここは軍事基地です。 

言うまでもなく関係者以外お断りです。

身振り手振りする母を取り囲んだ自衛官達は、建物の方へ母を囲んだまま去ってしまいました。

一部始終を車の助手席から見ていた、当時小学一年生の筆者は、さながら怯えるチワワのように、暗い車内でひとり震えていたのでした・・・。

しばらくして、母が戻ってきました。

自衛官に見送られ、眉間にシワを寄せて憮然とした表情で歩いて戻ってきました。

母は
     ポストを見に来ただけと言ったが、わかってもらえず、結局わられた。

と、納得出来ない様子で言っていました。 

母が無事戻ってきたので、とりあえずは安心しました。
それとともに自衛隊って冷たいと子供心に思ったのでした。

ポストを見に来ただけなのに・・・と。


まあ、大前提として、自衛隊に郵便ポストを見に行く事がそもそもおかしいのですが。

母は立腹して自衛官は冷たいと文句をいいながら、車を発進させました。

そして、帰路につき、宿題は結局想像で書きました。

当時筆者7歳、母36歳のほろ苦い思い出です。