僕の家からは火葬場の煙が見える。
火葬場自体は山に隠れているものの、火葬の煙…黒煙が上がるのは見えた。
その火葬場の煙も、とある噂が広がっている。
煙は宙を舞い、次第に故人の笑顔を形作るというのだ。
実際、火葬された故人の穏やかな笑顔が現れ、涙したという話を何度も聞く。
噂は本当なのかもしれない。
そんな時、長年の介護の末、僕のおばあちゃんが死んだ。
ゆっくりと病気が進み、最終的には僕のことすら分からなくなった。
徘徊して、保護に来た警官と、僕と、音信不通の叔父をよく混同していた。
ある夜一人で、ひっそり息を引き取っていた。
長い、長い介護だった。
僕はようやく天に召されたと安堵すら感じた。
僕は用事があったからちょっと行けなかったが、おばあちゃんの火葬もその火葬場で行うことになった。
もくもくと上がる黒煙を、僕はビールを飲みつつ眺めた。
ひょっとすると、おばあちゃんの最後の笑顔が見えるかもしれない。
おばあちゃんの火葬の時間が来て、黒煙が上がり始めた。
黒煙は、ゆっくりと集まってゆく…
次第に顔の形を形成していく。
噂は本当だった!
僕は驚いた。
煙は懐かしい、おばあちゃんの顔になってゆく。
だがその表情は、この世のものと思えぬものだった。
目は釣り上がり、口はへの字…
シワは放射状に刻まれ、眉間は険しく、敵意と憎悪むき出しの表情で僕を見据えている。
まるで、許されざる者を睨み付けるかのように………
空に浮かぶ黒い憎悪の形相…それがおばあちゃんの煙だった。
僕は煙を見据えた。
そうか…。
おばあちゃんはお見通しだったのか。
僕の本当の気持ち
乱心したおばあちゃんの介護に…心底嫌気が差し、疎ましく思って激しく憎んでいた事を……。
はやく居なくなればいいと、毎日祈っていた事を……
【終わり】
フィクションなんですが、妻には大不評でした…
夜は漫画の更新します(^▽^)/
よろしければ見てくださいまし( ´∀` )