色白ゆうじろうの無味無臭ブログ

怪奇・ホラー漫画を中心に、小説、エッセイなど読み物を投稿してます。

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【グルメエッセイ】「ぶにぶに」のお肉

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「ぶにぶにのお肉」 


贅肉のことではない。
食肉の脂肪分や柔らかい所のことを、我が家ではそう呼ぶ。


例えば、チキンの皮、ぽんじり、ホルモンの白い雲のような部分、ステーキの端っこの脂…この様な「ぶにぶに」とした脂の塊のことだ。


我が家は皆これが好きである。


料理に出しても切り分けて、大事に味わって食べる。
「『ぶにぶに』がうまい」と子どもたちは口々に言う。


「ぶにぶに」を求めるがあまり、息子と娘が喧嘩をしたことも多い。


どちらの皿の肉に「ぶにぶに」が多いかと。


そのうち最も大きいもの(特にステーキの脂肪分は)は、まず私が頂くようにしている。


「ぶにぶに」が家族問題に絡めば、たちまちに昭和スタイルの家父長制が敷かれる。


日々働いたこの家長であるお父さんに「ぶにぶに」を寄越しなさい。
誰のお陰で「ぶにぶに」が食卓に並ぶのだ……と。

 


そして争いは繰り返される。


滋味溢れ、旨味と脂分のハーモニーが何とも言えない。


いつかステーキの端っこの脂だけを売り出してくれないか。


高いステーキの端っこにしか、この白い至宝がないのが残念でならない。


……だが妻はぶにぶにを嫌がる。
鶏皮も苦手で、モモより胸肉が好きなほどだ。


私や子どもたちが「ぶにぶに」を取り合い、舌鼓を打つ姿を信じられないという顔で見ている。


私は、スーパーの牛脂を眺めて思う。
いつかこれだけを、それこそ、ニンニクの茎と炒めたりしたら…激ウマなんじゃないかと…


だが思うだけだ。
健康診断にひっかかり…
胃カメラを飲まされて「オエッ」と情けない声を出した私には、あまりに危険すぎる禁断の味なのだ。


いつか良質な脂身がスーパーの肉売り場に並ぶ日を夢見ている。